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フード・アクション・ニッポンアワード2010入賞

フードアクションニッポン

 「紀州梅そだち(梅BX70)」の開発

和歌山県の特産品である紀州梅干しが生産されるときに副産物として梅酢(塩分を含む酸味の強い梅果汁)が産出されます。紀州梅干しの生産増加にともなって大量に産出するようになった未利用資源:梅酢の用途開発を目的に、株式会社紀州ほそ川と和歌山県養鶏研究所との官民連携の研究が、1999年から始まり5年の歳月をかけて、梅の持つ成分が凝縮された梅酢飼料「紀州梅そだち(梅BX70)」が開発されました。

 「紀州梅そだち(梅BX70)」の効果効能

梅酢飼料「紀州梅そだち(梅BX70)」で育った鶏は、免疫力が強化され、生存率は5%向上しました。採卵鶏では産卵率、卵質の向上、卵黄中のビタミンA、葉酸、パントテン酸等ビタミンB群の増加など、有効成分が一般卵より多く含まれています。ブロイラーにおいても、生存率、良品率、夏場の肥育性が良いだけではなく、水分率が高い、保水性が良い、ピンクの肉色、味、香り等肉質が改善されました。その結果、2008年食肉産業展「地鶏・銘柄鶏食味コンテスト」で「紀州うめどり」は、そのおいしさが認められ、各地の有名地鶏を上回る評価で堂々の総合第1位に輝きました。

「紀州うめどり・うめたまご」ブランドの確立

自給率向上のためには、生産コストに見合った価格で販売出来るマーケットを育て、生産者の経営を安定させなければなりません。おいしい鶏肉と鶏卵を発売するに当たって、その価値に見合った価格で販売するには、生活者に価値を認めてもらえるブランドの確立が重要と考えました。和歌山県畜産課の協力得て、まず「紀州うめどり・うめたまごブランド化推進協議会」を設立し、生産者の募集と飼育基準を作成し、ブランド構築が始まりました。紀州梅干が日本一のブランドを確立するに至った過程を検証し、紀州梅が持っているブランド価値を最大限に生かして、3年間でブランドを確立しました。(紀州うめどり・うめたまごブランド化推進協議会ホームページ:http://www.umedori.com/
紀州うめどりの生産羽数は、発足時(2005年)の80万羽から2008年には150万羽となり、生産が需要に追いつかない状況が続いています。また、紀州うめたまごの採卵鶏も4万羽が飼育されています。

マダイ等水産への展開

「紀州うめどり・うめたまご」が話題になると和歌山県串本町のマダイ養殖業者が「紀州梅そだち(梅BX70)」を使って「紀州梅まだい」を開発しようとの取り組みが始まりました。そして一年間の試験飼育で、元気に育ち脂の乗ったおいしいマダイができることがわかりました。この結果を受けて和歌山県水産試験場で本格的な研究が始まり、有効な薬のなかったマダイのエドワジエラ症に画期的な効能があることが判りました。2009年に「紀州梅まだいブランド化推進協議会」を立ち上げ、ブランドを確立すべく取り組みを展開しています。紀州梅まだいは、和歌山県が推奨するブランド県産品「プレミア和歌山」に登録され、会員の努力で魚価の厳しい中でも価格が維持されています。
2010年には、和歌山県が生産量全国一を誇るあゆが「紀州うめあゆ」として発売されました。和歌山県水産試験場での飼育試験では、鮎養殖一番の課題である冷水病に効果を発揮することが判りました。今後展開が期待されるところです。

養豚への展開

現在、紀州うめどりで培った飼育技術を生かして、「紀州うめぶた」の開発に取り組んでいます。エコフィードに梅酢飼料「紀州梅そだち(梅BX70)」を混合することによって、母豚は元気な子豚を生み、離乳後の子豚も病気知らずにたくましく元気に育ちます。丈夫に育った子豚は、肥育期になるとエコフィードを食べてどんどん大きくなりました。エコフィード100%飼料でも梅酢飼料「紀州梅そだち(梅BX70)」によって、脂が甘く、赤身にサシの入った美味しい肉質になることが判りました。紀州うめどりで作られたマーケットでは、早くも「紀州うめぶた」の発売が心待ちにされています。生産コストが安くつくエコフィードを使って、しかも高品質な「うめぶた」生産は、全国に拡がる可能性を秘めています。

紀州梅冠ブランドの展開

和歌山の誇れる紀州梅ブランドで地産地消の県民だけではなく、生活者に期待される畜産や水産ブランドが「紀州梅そだち(梅BX70)」によって出来ました。農商工が一丸となって、価値ある産品を価値に見合った価格で販売できる市場を開拓し、生産者の経営基盤を確かな物にして、マーケットの期待に答えています。生活者に支持される国産品を提供することが自給率向上への第一歩と考えます。

食料自給率向上への貢献

梅酢飼料「紀州梅そだち(梅BX70)」を使用することにより、高品質と生存率向上を達成した「紀州うめどり」は、「安心安全、健康、おいしい」ブランドと生活者に受け入れられました。価格競争では輸入鶏肉に勝てないが、「紀州うめどり」は品質で生活者に選ばれることとなりました。安定した価格は、養鶏業者の経営基盤を強くし、美味しさは国内生産の品質の確かさを消費者に意識づけることになりました。来年度は環境に優しいブランドとしてアピールする為に、エコフィード利用の飼育試験を準備しています。
梅酢飼料「紀州梅そだち(梅BX70)」は、エコフィード飼育の養豚にすばらしい効果を発揮することが判りました。この養豚技術の普及によって、エコフィードの需要が拡大し、食品残滓の有効利用が進めば、食糧自給率向上につながります。

生活者・関係者からの評価

6年間のブランド化推進協議会会員のたゆまぬ努力によって「元気でおいしい」ブランドとして生活者に支持されてきた「紀州うめどり・うめたまご」は、プロの評価が高いだけではなく、広く生活者に知られたことによって、ホテル、レストラン、料亭、居酒屋、駅弁メニューになり、うめたまごはケーキ、プリン、饅頭そして手みやげギフト等々いろいろな場面で使用され、ブランドの価値を一層向上させることとなっています。
現在「紀州うめたまご」は5生産養鶏場で取り組まれており、合計4万羽の採卵鶏が飼育されています。通常たまごより2割高で販売されているにもかかわらず、品質の良さが支持されて売り上げは伸びています。
「紀州梅まだい」も天然に負けない品質の良さで料亭やホテルで使われており、鮮度持ちの良さから海外への寿司ネタとして輸出されるなど評価が高く、その価値は価格(市場価格より50%高)にも反映されています。
「紀州うめあゆ」や「紀州うめぶた」も市場から期待される商品に育とうとしています。

 波及効果

梅酢飼料「紀州梅そだち(梅BX70)」による「紀州うめどり」や「紀州梅まだい」などの紀州うめ冠ブランドの確立は、「鶏から真鯛、鮎、豚、そして人に・・・」と和歌山県からおいしさと元気を発信することにつながり、和歌山県の梅産業及び養鶏業、畜産業、養殖業が高付加価値産業として活力を取り戻すことが期待されます。
梅農家から「梅酢」が梅加工業者に渡り、それが梅加工業者から「梅酢飼料」となって養鶏業者に渡り、養鶏業者から出た「鶏糞」が梅農家に渡る循環が生まれています。さらに本年度は和歌山県農業試験場が中心となって、「梅調味廃液を利用した高窒素・低臭鶏糞堆肥の製造による資源リサイクル」の研究に着手し、調味廃液の有効利用で環境に配慮した地域循環型農業の取り組みに発展していきます。
未利用資源だった余剰梅酢の用途開発から始まった取り組みが、畜産と水産の新ブランドの構築、農業と加工業と畜産業を結ぶ循環をもたらしました。こうして、和歌山県が誇る日本一の「梅」が地場産業の発展に貢献しています。

本事業における工夫

和歌山県みなべ町は、日本一の梅の里。80年、90年代と10年ごとに倍々に梅干しの生産量が増え、その大量に増加していく梅酢の用途開発が地域の重要な課題になっていました。紀州ほそ川は96年よりその課題に取り組み、99年に「夏バテした鶏に、梅酢を飲ませると元気になる」という地域で語られてきた話をヒントに、畜産に活かすべく梅酢の可能性を確かめる共同研究を県養鶏研究所と始めました。梅酢の脱塩と、新規加工技術によって作られた梅酢加工品を、養鶏研究所が機能性検索や実用化に向けての飼育基準策定等々効果効能を検証して、梅の成分のクエン酸やポリフェノール等が凝縮された梅酢飼料「紀州梅そだち(梅BX70)」が開発されました。新規分野の畜産や水産飼料への用途開発は、梅酢の価値を見直すこととなり、未利用資源となっていた過剰問題は解消されました。そして古来より言われていた健康食品としての梅の効能が、畜産に利用することによって証明されたのです。梅酢飼料「紀州梅そだち(梅BX70)」は、地域の誇る紀州梅干ブランドが持っている美味しさや安全安心、高級、健康イメージを活かして、多くの生活者に支持される紀州うめ冠ブランド商品を開発することができたことも大きな成果でした。

フード・アクション・ニッポンアワード2010入賞